うすのろと阿房な話

個人化された日常にあること 気になったことを。 白南風(しらはえ)とは梅雨が明ける6月末ごろから吹く、爽やかな空気を運ぶ南風のことを言います。

W杯 ブラジル大会 準決勝 ブラジル VS ドイツ戦の回想、今後の世界のサッカーに想うこと

W杯はあっと言う間に、あと2試合 決勝と3位決定戦を残すのみとなった。

 

決勝の見通しの前に、準決勝の2試合の流れからおさらいをしてみる。

 

”凍りつく” ある、スポーツ欄の見出しの冠詞が適格に表している。

 

 

強豪同士、しかも準決にしてこの破壊的な結果1-7を述べるまでもなく、

前半の23分の2失点目でブラジルの劣勢を跳ね返すテンションは文字通り、切れた。

 

1点目はセットプレー、両者守備に自信があり、そうそうキレイな形での得点はなかなか見られないとは推測していたが、あまりにも早い時間帯にセットプレーでドイツ先制。

 

立ち上がりから猛り狂ったような怒涛のプレスをかけ自由にさせていなかったものの、この一点で大きくドイツが深呼吸をしてブラジルのプレスを受けたつ形に徐々に適応していったように感じられた。

 

大きな矛を失い、失点を先に喫することの意味が分かっていただけに、ブラジルにとってこの一点は文字通り、チームバランスを壊す号砲となった。

 

守備の一翼であり、チームディフェンスの要の離脱によって、もう一方のルイスに守備のプレッシャーが圧し掛かる。そこを見透かしたかのように ドイツ攻撃陣がスクリーンをかけて ミュラーマンマークをはがしにかかる。そして綺麗にフリーとなる。そして後は、ほとんどゴールエリア付近でインサイドにてボールを押し込むだけだった。

 

バスケでは許可されているものの、これは主審にしっかりとみられていた場合、ファウルに値する行為。しかし、この行為が実際にファウルと認定される回数は多くない。あまりにきっちりと嵌って、得点に結びついたため、その直前のプレーが映し出されたに過ぎない。

 

ともかくルイスにとってこの1点はただの1失点ではなかった。守備の重圧を背負ってのプレーでしかも自分がらみの失点。メンタル的にこの状況を跳ね返し、冷静に統率するだけの精神力をもつのは尋常では叶わない。

 

そのミスを取り戻そうと、組み立てに躍起になって前線にフィードを送る。このDFラインからの構成はグループリーグから見られ素晴らしいボールを供給する一端となっていたが、ここまで来るとブラジルは十分スカウティングされつくしている。しかも相手はドイツ。攻撃の半分以上を担っていた10番はいない。単調なロングボールは相手DFの壁の前にことごとく跳ね返され、相手ボールの時間だけが徐々に長くなってくる。

 

試合を見ている中、このペースでボールを失っていたら、点を早い段階で取らない限り、90分は絶対にDFが持たないだろうと思っていた。代替方法としてロングフィード主体からある程度ボランチをかませた構成を加えないと難しいだろうと思ったが。中盤から繋ごうとしてもドイツの前線のプレッシャーも相当のもので、中盤からのビルディングをしたとしても、下手な奪われ方をし兼ねない。綺麗なポゼッションを放棄しているわけではないだろうが、どちらかというと強固な守備からカウンターの戦術を研ぎ澄ませてきたブラジルにとって、今大会屈指のポゼッション型の好チームに2点を取らなければ勝てない状況はあまりに厳しすぎたと言える。

 

そして、いかに守備的MFのフィジカルが優れていても、息つくことができない中、相手ボールに合わせて守備をしプレッシャーをかけ続けることはできない。

 

近年のスペインが基軸はバルセロナだった。今年のドイツは基軸がバイエルン。しかも前年には欧州王者となっていて、今年のブンデスリーガでは圧倒的な力で優勝。チャンピオンズリーグも準決まで残ったものの、日程的にはそれほど酷使されておらず、W杯に合わせた身体づくりも可能だったため、シーズン終了直後とはいえど、他の欧州のトップクラブに属する選手に見られたようなコンディションの大きな綻びは見られない。

 

それでも思い通りのポゼッションはさせじと、ハイプレッシャーのままドイツに襲い掛かるブラジル。

ドイツの2点目までのブラジルのプレッシャーは鬼気せまるものがあり、チャンピオンズリーグかと見紛うような火花散る鍔迫り合いが見られた。

 

先制点から10分後 クローゼがオフサイドのライン崩れから2点目。W杯の通算得点王の記念の16点目となる得点を決めた時点でこの試合は実質的に閉じられることになった。

 

ドイツチームから言えば、カウンター主体のブラジル相手で、しかも攻撃のほとんどを担う選手がいない中2点のアドバンテージ。チーム全体の精神面を大きく優位に立たせることになった。

 

1-7という衝撃的な結果は、誰も予想しなかったとはいえ。コンフェデからここまで、ほぼ固定されたスタメンを組み、バックアッパーの経験と、コンビネーション(メンタル面においても)がどうしてもスタメンと大きく差がある構成を取ってきたチーム事情からすれば、ある意味納得できる帰結とも言える。

 

攻守にわたる2人の主軸が抜けた穴をピッチに顕在化させるには大きすぎる先制点だったと言わざるを得ない。

 

多くのチームの寄合で構成される代表チームのコンビネーションを、限られた時間の中で構築するのには多くのむずかしさがある。

 

 

通常であれば長期にわたるチームプランが必要。それが無理な場合、クラブチーム内のユニットで揃えてくるチームも出てくるようになってきた。コンフェデで優勝して一気に優勝候補の一角に躍り出たセレソンは逆に相手に多いに研究される対象となり、コンビネーションを深める結果のスタメン固定がスタメンを欠いた時のオプションの準備不足の温床となってしまう。

 

しかしながらこれは結果論で、何故シウバがあそこでイエローをもらったのか、エースを怪我で欠くことになったのは、と言っても仕方がない。スタメンが固定化されることの一番の弊害と言えるのはバックアッパーが試合に入る際、どうしても自信をもってピッチに入れなくなることだ。

 

メンタル面だけではない。同じ選手と長い間、呼吸を合わせてプレーをしていると、どうしても癖がついてしまいポッと違う選手が入った時に違和感が出てきてしまう。高いレベルでの調和が必要な場合、その癖が一瞬の判断の迷いを生んで、大きなミスやコンビネーションの不良となり、チームのバランスを崩す。

 

常時入れ替わることが必ずしも好しとは言えないものの、流動性をもったシステムを組んで経験を重ねていければ、個々の選手だけでなく、チームとしてもいろんなシチュエーションの準備(特にメンタル面が大きい)ができることは言うまでもない。

 

しかし1ヶ月の長丁場、運動量も年を追うごとに高くなっている今のサッカーで11人+交代枠でチーム運営をすることのリスクとアドバンテージはある程度折込み済みだろうといった方がいいのかもしれない。

 

 そのリスクは認識しつつも、開催国として大きなプレッシャーのかかる中、厳しい予選を免除され、チームとしても個々の選手としても、本当の意味での実戦を積む経験がそれほど多くなかったことが、”結果から見る”とマイナスに寄与したといえるだろうか。

 

エースや守備の要を外してプレマッチなど行いバックアッパーを育てつつ、その上で結果も求められるというのは開催国にしかないむずかしさだったのかもしれない。こればかりはセレソンになってみないと本当の所は誰にもわからないだろうが。

 

1つの出来事で大きくメンタル面が左右され、結果に如実に出てきてしまうのがこのレベルのサッカーと言うしかない。

 

 

しかしチーム運営を除いた場合、チーム戦術面からすればブラジルやスペインの敗退が今後のワールドサッカーの潮流に大きな影響を及ぼすことはそれほどないと思える。

 

突出した選手、またはグループの新陳代謝のサイクルの1つである。同じグループを組んでいるとコンビネーションは当然練られてくるが、その分研究されて対策も立てられる。これは、コインの裏表のようなもの。

 

ポゼッションを担っていた中心選手が大きく入れ替わることになれば、同じスタイルを維持するのは厳密な意味で言えば不可能であり、それはスペインだけでなく、バルセロナにおいてもそうだろう。バルセロナがドリームチームと言われた時代、セリエAミランが席巻した時代、ユーベが復古した数年、ユナイテッドが幅を利かせた数年、銀河系軍団のレアルが頂点に立っていた数年、さらに、圧倒的なポゼッションを誇るバルサとスペインが敵なしだったこの数年。

 

世界の頂点に一定期間同じチームが立ち続けそれが終わるのは、戦術が出尽くしたとかそれを超える戦術が出てきたというより、突出した選手(チームの統率力であったり、クリエイティブ性だったり、闘争心だったり、それはその選手の特性によるが)やユニットが高齢化などによってチームの1つのピークが終わることで説明した方がわかり易いし、納得できるだろう。

 

卵(選手)が先か、ニワトリ(戦術/システム)が先かみたいで厳密な答えはないが、ある状況を解決するために、あるのがシステム優勢か、選手優勢か、みたいなものともいえる。

 

そして時代を代表するような突出した選手というのは概して高度な育成システムから生まれるものではないことも皮肉と言えば皮肉なものである。

 

 

話は換わるが、この2大会(足かけ7年±1)を見ると、クラブチームの熟練度をそのまま代表に移行して成功を収める例が出てきた。これが常態化してきた場合、よくもわるくも、W杯の位置づけそのものが大きく問われることも頭に入れておかなければならない。あまり認めたくないものの、世界最強の代表チーム<世界一のクラブチームというのは既に証明されている。

 

 下馬評をおさらいするまでもなく、決勝はドイツ有利。しかし、1点を先にどちらが取るかでチームのメンタルは天と地ほども変わる。盤石なチームをもってしても、思いもよらない1点でチームが崩れることだってある。主審のジャッジ一つで試合の流れが大きく変わることだってある。どんなに盤石なチーム状況をもってしても、強いチームが必ず勝つわけではない。事前に準備したってどうすることもできない、運だって大きな要素だ。

 

つまり予想しても当たることなどほとんどないし。結果からそれらしい説明を添えるぐらいが関の山だ。